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3D造形物の気密性を高める含浸剤の選び方

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3D造形物の気密性を高める含浸剤の選び方

3Dプリンタで出力したパーツを、水圧や気圧がかかる実環境でのテスト、あるいは製品組み込み等の実運用に投入する際、試作受託企業や開発担当者が直面するのが「気密性の不足による圧漏れ(リーク)」です。

特にABS樹脂などの熱可塑性樹脂を用いたFDM(熱溶解積層)方式の造形物では、外観上はきれいに成形されているように見えても、層と層の間に目に見えない微細な隙間(ポロシティ)が無数に存在します。これにより、気密性を保持できず、クライアントが求める設計通りのパフォーマンスを発揮できないケースが多発しています。

この気密性不足を解決する有効な手法が「含浸(がんしん)処理」です。しかし、金属鋳物向けなどの従来型含浸剤をそのまま3Dプリンタ造形物に使用すると、「素材の樹脂が溶けて形状が変化する」「熱硬化時の高温で造形物が歪む」といった別の重大な問題を引き起こしてしまいます。

本記事では、3Dプリンタ造形物(特にABS樹脂)の気密性を安全かつ確実に高めるためのメカニズムと、従来の課題を克服した最新の「高性能含浸剤」の選び方・運用方法を詳しく解説します。

1. なぜ3Dプリンタ造形物は気密性が不足するのか?

3Dプリンタ造形物が気密性を保持しにくい主な理由は、その成形プロセスと内部構造に由来します。一般的な射出成形品とは異なり、積層造形特有の以下のような構造的要因が存在するためです。

① 積層痕(ポロシティ)とミクロな隙間の発生

熱で溶かした樹脂フィラメントを細く押し出して積み重ねるFDM方式などでは、円状または楕円状に押し出された樹脂同士が重なる境界部分に、どうしても微細な中空の隙間(ポロシティ)が生じます。これが連続的な経路となり、気体や液体が容易に透過・漏出する原因となります。

② 内部構造(インフィル)の空洞化によるピンホール漏れ

軽量化や造形時間の短縮を目的に、3Dプリンタ造形物は内部をハニカム構造などの空洞(インフィル)にすることが一般的です。この場合、表層にわずか1箇所でもピンホールが存在すると、侵入した液体が内部全体へ拡散し、他の箇所から漏れ出してしまう「伝い漏れ」が発生します。
※そのため、含浸処理を行って高い気密性を得ることを前提とする場合は、内部への液溜まりを防ぐために「完全中実(インフィル100%)」での造形を推奨します。

③ 積層密着強度のバラつき

造形時の環境条件によって、層と層の熱融着強度にバラつきが生じます。使用時に水圧や気圧といった物理的な負荷がかかることで、弱かった層間が微細に開口し、漏れが加速することもあります。

2. 従来の含浸処理における2つの大きな課題とリスク

多孔質材料の隙間を樹脂液で埋めて密閉する「含浸処理」は、長年使われてきた信頼性の高い技術です。しかし、これをそのままABS樹脂等の造形物に応用すると、以下の2つの深刻な障害が発生します。

課題1. 従来の含浸剤による「樹脂の溶解」と寸法破綻

従来の汎用含浸剤(PS-901など)の多くは、ABS樹脂などのプラスチックに対して強い攻撃性を持っています。これらの含浸剤にABS樹脂パーツを浸漬させると、樹脂の表面および内部が化学的に溶解し始めます。実用性を検証した3日間の浸漬実験データでは、重量が約52%も減少して元の形状を維持できなくなるという結果が確認されています。

課題2. 高温硬化に伴う「熱歪み」と素材へのダメージ

含浸処理では加熱による硬化工程が必要ですが、従来の一般的な含浸剤は90℃以上の高温に設定されています。一方で、汎用的なABS樹脂の熱変形温度は80℃〜100℃前後であるため、加熱工程自体で造形物が軟化し、「膨張」「反り」「歪み」が生じます。結果として、クライアントが求める厳しい寸法公差を守ることが不可能となります。

3. 失敗しない!3Dプリンタ造形物向け含浸剤の選び方【4つの必須基準】

精細な意匠と寸法精度を完璧に保持しながら、気密性を大幅にアップさせるためには、以下の4つの基準を満たした専用の含浸剤を選定することが不可欠です。

基準①:ABS等の造形素材を侵さない「高い素材互換性(不溶解性)」

最も重要なのは、ABS、PCなどのエンジニアリングプラスチックと化学変化を起こさない高い素材互換性(不溶解性)を備えていることです。素材を溶解させない製品を選ぶことで、エッジの鋭利さや微細な意匠を一切損ねることなく処理を行えます。

基準②:熱変形を極限まで抑える「65℃以下の低温硬化設計」

造形物の熱歪みを防ぐには、加熱硬化時のプロセス温度を素材の熱変形温度より十分に低いレベルに抑える必要があります。65℃程度の低温環境で確実に硬化が進む含浸剤であれば、樹脂パーツに物理的な熱ストレスを与えません。

基準③:微細な隙間へ素早く浸透する「100mPa・s以下の低粘度」

造形物特有の複雑な微小隙間の奥深くまでスムーズに浸透させるためには、粘度が100mPa・s以下(さらさらとした状態)の低粘度液であることが求められます。

基準④:コストを抑える「長期保存安定性」

試作現場での安定運用には、液体の保存性能も重要です。23℃前後の常温下で6か月以上品質が安定し、頻繁な液交換による材料コストの増大を防げる製品を選ぶことが推奨されます。

4. 課題を克服するプラセラム「3Dプリンタ造形物用含浸剤PS-423」の実証データ

前述した「不溶解」「低温硬化」をクリアし、3Dプリンタ造形物の封孔専用に開発されたのが、プラセラムの「3Dプリンタ造形物用含浸剤PS-423」です。以下は、従来の汎用含浸剤との性能を比較した実証データです。

比較・評価項目 従来の汎用含浸剤(PS-901等) 3Dプリンタ造形物用含浸剤PS-423
ABS樹脂の不溶解性
(3日間浸漬実験)
樹脂が激しく溶解し、
重量が約52%減少(形状崩壊)
不溶解
重量減少は0.25%以下(実質変化なし)
推奨硬化温度条件 90℃〜100℃以上の高温加熱
(熱歪み・反りが発生)
65℃の低温硬化設計
(推奨硬化時間:15時間以上)
粘度(浸透性の目安) 低粘度 低粘度
液特性・保存安定性 高い保存安定性 高い保存安定性

表の通り、従来の汎用含浸剤(PS-901等)も低粘度かつ高い保存安定性を備えており、含浸剤としての基本性能は非常に優れています。しかし、PS-423はそれらの優れた利点をそのまま継承しつつ、決定的な違いとして「ABS樹脂を溶かさない(不溶解性)」と「65℃での低温硬化」を実現しました。

また、PS-423の「65℃で15時間以上」という硬化プロセスは、退勤時に恒温機へ投入し、翌朝出社した際には硬化が完了している『夜間無人バッチ処理』に最適な運用設計となっており、試作受託企業様の日中の作業リソースを圧迫しません。

5. 3Dプリンタ造形物への含浸処理の基本ステップ

実際に含浸剤を用いて、完全中実(インフィル100%)の3Dプリンタ造形物に気密性を付与する際の一般的な作業手順は以下の通りです。

  1. 含浸工程(真空含浸):造形物を含浸剤に浸漬させ、真空排気を行うことで、内部の奥深くにある空気と含浸剤を効率よく置換します。
  2. 洗浄・余剰液除去:水洗いが可能です。造形物表面に付着した余分な含浸液は、ウエス等で丁寧に拭き取って除去することを推奨します(特殊な洗浄溶剤は不要です)。
  3. 低温硬化工程(65℃):65℃に保たれた恒温機などで15時間以上加熱し、含浸剤を完全に重合硬化させます。(夜間無人バッチ処理を推奨)

6. まとめ:形状を完璧に維持し、実運用に耐えうる気密性を手に入れる

3Dプリンタで出力したABS樹脂パーツの気密性不足(圧漏れ)は、試作受託案件における大きな壁となります。しかし、従来の「溶けるリスク」「熱で歪むリスク」を回避できる専用の含浸剤を選定すれば、この問題は確実に解決可能です。

  • ABS樹脂などの造形素材を侵さない「不溶解性」
  • 熱変形をシャットアウトする「65℃の低温硬化」
  • 日中の業務を妨げない「夜間無人バッチ処理」対応
  • 極小の空隙まで速やかに浸透する「低粘度」と「保存安定性」

これらを備えた含浸処理を導入することで、クライアントが求める精細な寸法精度を損なうことなく、水圧テストや流体機器への実運用にも耐えうる高気密・高品質な3Dプリンタパーツを安定して供給できるようになります。

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