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「木材の防腐、防虫、防燃処理」について掲載しました。

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「木材の防腐、防虫、防燃処理」について掲載しました。

内容は2015年11月28日~29日に近畿大学で開催された「材料技術研究協会討論会」で発表したものです。

研究の意義

近代工業化と人口の増加を受けて、化石燃料使用量は拡大を続け、これから発生するCO2が増大し、CO2大気中濃度は現在402ppmに達した。今年度は約90億トンの化石燃料が使われ、これにより320億トンのCO2が発生した計算になる。これによる悪影響を低減すべくCO2排出規制が叫ばれている。

しかし、大気中CO2排出の第一位は燃焼ガスではない。植物等生物の腐敗分解して発生し、同時に光合成で固定される量は、年間陸域で2300億トン、水域で2000億トンある。これ等は、光合成を行なう植物や植物プランクトンの主食がCO2であるので、継続的に自らの生態系を維持するためには、CO2を過不足なく供給するシステムを形成しているからである。重量にして人類の数倍のシロアリが生息していると推測されており、虫類も植物生物の腐朽に関与している。

億年スケールで見ると、化石燃料はすべてバイオ起源である。そこで生物の代表格でありCO2の化身である木材を、防腐、防虫、防燃処理すれば、さらには炭化処理してCO2を固定すれば、増加してしまったCO2濃度を低減させて、環境を元に戻す事が出来る。

問題点

防腐、防虫剤の有効成分としては、安価安全で無臭、長期間効果が持続するものがよく、CuまたはCu塩、Zn塩、ホウ酸塩がこれに適合し、含有量は1%(木材1立方メートル当たり数kg)前後の少量でよい。含有量によってランクが付けられている。

これに比べると、防燃には大きな含有量が必要である。たとえば、内装材の規格であるISO-5660-1では、ホウ酸塩やリン酸塩を防燃剤とした場合、おおよその目安として木材1立方メートル当たり難燃で50kg以上、準不燃で100kg以上、不燃で200kg以上含有している必要がある。これ以外の防燃剤ではさらに多含有量を必要とする。 UL-94という電気部品に適用される規格があり、自己消火性の程度だけで評価する。含有量は数kg~数十kgで達成できる。この簡便規格を木材にも適用できると良い。

一般火災の原因のトップはここ久しく放火なので、自己消火性を付与すれば簡単に防ぐことが出来る。 これらの、および関係する規格は、いずれも破壊試験によるもので、実際の出荷製品に対して実施できない。このため不適格品が出回る現状になっている。 そこで非破壊で含有量を知る検査方法を検討した。

モニター成分の選択決定

厚さ1mm以上内部の有効成分を検出でき、かつ施工後も現場で検査が出来る方法を選んだ。すなわちハンドヘルド型の蛍光エックス線分析計であるThermo Fisher Scientific社製のNITON XL3t-900S-Mを使用した。

1000ppmのモニター成分を含む水溶液を吸い込ませた濾紙を乾燥して得た試験体の上に、スペーサーとして厚み35μmの濾紙を重ねて検出強度を測定したもの図1に、スペーサーとして厚さ200μmの経木(ヒノキの薄板)を重ねた場合を図2に、スペーサーとして厚さ2mmの杉板を重ねた場合を図3に示した。

その結果、この分析計では測定できないB、N、Fのほか、測定深度が250μm以下のCl、S、P、Si、Al、Mg成分等には、モニター成分としてSr、Zr、Moが妥当である。実際には Sr、ZrOは陽イオンでホウ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、珪酸塩等とは不溶性化合物を生成してしまうので、これらの場合はEDTA等とのキレート塩として適用する。モリブデン酸塩は陰イオンなので簡単に相溶出来てモニターに出来た。

検出強度は三者のうちもっとも大きくAl板2mm程度下の木材からも検出でき、使い易い。Zn、Cuを有効成分とする場合は、それ自身の検出強度がかなり大きいので、モニターがなくて含有量が多ければ直接測定できる。

研究の成果

実用の大きさの木材を、真空-加圧法により、有効成分にモニターとしてモリブデン酸ソーダを少量(Mo 790ppm)添加して実施している。屋外品についても施工後の監視を行なっている。 本件を基にして、特許申請し、平成27年4月25日、特許第5528995号「機能性多孔質体、その製造方法、及び、機能性多孔質体の評価方法」を取得している。

研究の成果 グラフ
研究の成果 グラフ
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